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西国大名に対する抑えの城は複数ある?――「点」ではなく「線」で捉えると歴史はもっと楽しくなる――

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西国大名に対する抑えの城」という表現はわりとよく使われますよね。

姫路城もそうですし、今年築城400週年を迎える明石城もそうです。あとは福山城もそうですね。ではなぜこんなにたくさんの「抑えの城」があったのでしょうか。

因果を時系列で捉える

そもそも「西国大名を抑える」必要が生まれたのは「関ヶ原の戦い」以降の話ですが、この合戦において外様の大大名がたくさん生まれてしまったことに起因します。徳川家康は自分の軍勢を温存したという説もありますが、そもそも朝鮮出兵をまぬがれた徳川軍は弱かったので戦力として計算しづらかったという説もありますね。

以下は東軍につき大幅加増された豊臣系大名の一覧ですが、「親徳川」というよりも「反三成」の立場から東軍についた大名が多いことが伺えます。

東軍についたおもな豊臣恩顧の大名の戦後処置

武将 旧領 新領
前田利長 加賀金沢83.5万石 119.3万石(加増)
蒲生秀行 下野宇都宮18万石 陸奥会津60万石
黒田長政 豊前中津18万石 筑前名島52.3万石
池田輝政 三河吉田15.2万石 播磨姫路52万石
加藤清正 肥後隈本25万石 51.5万石(加増)
小早川秀秋 筑前名島35.7万石 備前岡山51万石
福島正則 尾張清洲24万石 安芸広島49.8万石
細川忠興 丹後宮津17万石 豊前小倉39.9万石
浅野幸長 甲斐府中22.5万石 紀伊和歌山37.6万石
田中吉政 三河岡崎10万石 筑後柳河32万石
堀尾吉晴 遠江浜松12万石 出雲松江24万石
山内一豊 遠江掛川5.1万石 土佐浦戸20.2万石
藤堂高虎 伊予板島7万石 伊予今治20万石
中村忠一 駿河府中14.5万石 伯耆米子17.5万石
京極高知 信濃飯田10万石 丹後宮津12.3万石
京極高次 近江大津6万石 若狭小浜8.5万石
仙石秀久 信濃小諸5.7万石 所領安堵

いずれにせよ、大坂城に豊臣秀頼がいる状態で、これらの豊臣恩顧の大大名たちが結託すればせっかく勝利したことも水の泡なので、相当な警戒心を持っていたと思います。

そこで家康は娘婿である池田輝政に姫路城を大改修させて大坂城包囲網を構築し、「大坂の陣」のあとは明石城や尼崎城を築いて西国から機内へのルートを(陸路も海路も)支配しました。
(あわせて「天下普請」により近畿周辺に多くの城郭が築かれています)

さらに危険視していた福島正則を改易(正確には大幅減封&移封)できたことに伴い、広島藩を分割してあらたに水野勝成が福山城を築きます。これは「一国一城令」後でもあり、異例の新規築城でした。

つまり、

  • 1600年(慶長5年)関ヶ原の戦い
  • 1601年(慶長6年)姫路城の改修工事開始
  • 1614年(慶長19年)大坂冬の陣
  • 1615年(慶長20年)大坂夏の陣
  • 1618年(元和4年)明石城着工
  • 1619年(元和5年)福島正則改易、福山城着工

という時系列で考えることが大事です。
この期間の流れをパラパラアニメにしてみました。

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とくに1619年(元和5年)は正月に明石城の築城が開始されると、同じ年に広島藩の福島正則が改易となり、その領地が分割されるかたちで福山藩が誕生して、水野勝成が福山城を築城することになります。
わずか一年の出来事ですが、こうした前後関係をおさえておくと江戸時代初期における徳川幕府の人事(大名の配置関係と「武家諸法度」を乱用した積極的な減封と改易)が265年間の礎になったであろうことは容易に想像できます。

すべてのお城が「同時に」存在していたわけではないことに注意

いまぼくらはすべてのお城があったことを前提に見てしまいがちですが、姫路城を改修したときには明石城はなく、小笠原忠政が明石城の築城を開始した時点では福山城はおろか福山藩は存在していなかったわけです。

だから歴史を見るときは何年(いつ)の状況かを踏まえて、その時点でその城が存在したかどうかまで考えないといけません。
でもこのように歴史の流れを「線」で捉えることができるようになると一気におもしろくなります。

攻城団の地図検索も、たとえば「年」を指定すると、その時点で存在していた城だけが表示されるとかすればおもしろいかもしれませんね。

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