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【江戸時代のお家騒動】七家騒動 「為せば成る」の名君に立ちはだかった大問題

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【時期】1773年(安永2年)
【舞台】米沢藩
【藩主】上杉鷹山
【主要人物】千坂高敦、色部照長、須田満主、長尾景明、清野祐秀、芋川正令、平林正在

倹約を徹底させた名君と抵抗勢力の反発

米沢藩9代藩主・上杉鷹山といえば、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」の名言で有名な名君として知られる人物だが、藩政改革に生涯をかけた彼にも、お家騒動で苦しんだ時期はあった。

鷹山はもともと高鍋藩主・秋月種美の次男として生まれたが、養子として上杉氏に入ったという経歴の持ち主である。
1767年(明和4年)、養父である8代藩主・重定が隠居するのに伴って米沢藩主になった。この時の彼の呼び名は治憲で、鷹山を名乗り出したのは1802年(享和2年)の頃からなのだが、本書では知名度の高い「鷹山」で通す。

さて、藩主となった鷹山が初めに行ったのは大倹約であった。
藩主の生活を見直し、1500両あった仕切料を209両にまで減額。農民と同じように木綿の服を身につけ、食事は一汁一菜を常とした。さらには50人いた奥女中を9人に減らすことで人件費を削っている。

極めつけは、1769年(明和6年)に米沢城への初入部を果たした時のことだ。初入部の際はこれを祝って豪華な食事をとるのが一般的であったが、鷹山は赤飯と酒だけにして倹約を徹底させている。
もちろん、鷹山ひとりで改革はできない。彼が推し進めた倹約を補佐したのは家臣の竹俣当綱と莅戸善政らである。鷹山の改革を支持するグループは中堅の家臣層に多く、それまでのしきたりとは違った藩政に取り組んだ。
結果、これが老臣たちの反感を招いてしまう。

1773年(安永2年)、奉行の千坂高敦、色部照長、江戸家老の須田満主、侍頭の長尾景明、清野祐秀、芋川正令、平林正在の7名が登城して、鷹山に訴状を提出した。これが七家騒動の始まりである。
この訴状は「今の藩主は若さゆえに賞罰が明白でない」「倹約による歳出削減は小事にすぎない」「元来の国風である『質素律儀』に戻す」「鷹山を補佐する当綱らを免職させるべき」と強硬に主張しており、鷹山の改革を否定するものであった。
これに対し、鷹山は「隠居した重定と話し合う」として、その場での回答を避けようとしたが、7人は「答えをもらうまで帰らない」と更なる強硬姿勢に出た。

結局、家臣に呼ばれてきた重定が一喝することで急場はしのげたが、とにかく事態の対応を決めなければならない。
鷹山や重定に大目付らも加わって2日にわたり協議を重ねた結果、重臣たちが改革の方向性を否定しなかったため、訴状を提出した7人は厳粛に裁かれることになった。満主と正令は切腹、他の5人は隠居の上、閉門に処されたのである。

その後、この事件の裏には藁科立沢という儒学者が絡んでおり、彼が首謀者であることが判明した。
立沢は藩内で広く影響力を持つ高名な学者でありながら、鷹山の改革開始後は儒者の職を失うなど主流派とはいえない立場にあったのである。彼が改革反対派となるには十分な理由といえるだろう。結局立沢は斬首の刑に処されている。

改革が実を結んだのは現役時代よりも隠居後

七家騒動後も鷹山は当綱らと共に改革を進めていくことになるが、この事件によって藩内統制が出来たため、政策の打ち出しが容易になったと言われている。雨降って地固まる、というような事件であった。
――とはいえ、それでは鷹山の改革が常に順調に進んだかといえば、必ずしもそうではなかったのが実情だ。天明年間には当綱と善政がそれぞれ政治の一線を離れ、改革も停滞期に入った。鷹山も家督を重定の3男である治広に譲って隠居している。

しかし、隠居後も鷹山は藩政を掌握し続けた。
そして寛政年間、善政を中老職につけて再び改革を主導させ、殖産興業をはじめとする政策を進めさせた。鷹山の改革が最も成果を挙げたのは、実は現役時代よりもむしろこの隠居時代のことであるといい、ようやく一応の成功をおさめることとなった。
江戸時代を代表する名君であろうとも、政治改革はなかなか簡単にはいかないものなのである。
なお、暗殺されたアメリカのジョン・F・ケネディが、尊敬する日本人として上杉鷹山の名を挙げていることはあまりにも有名である。

掲載時、“上杉鷹山といえば、小泉純一郎元総理が引用した「米百俵の精神」で有名な名君として知られる人物”と紹介しましたが、「米百俵の精神」は小林虎三郎の故事でした。お詫びして訂正いたします。
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