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【歴代征夷大将軍総覧】鎌倉幕府4代・藤原頼経――親王の代わりに招かれた摂家の血 1218年~1256年

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「中継ぎ投手」としての将軍就任

幼名は三寅(みとら)。頼経(よりつね)は藤原摂家のひとつ、九条家の祖である藤原兼実(くじょうかねざね)のひ孫にあたる。この兼実は関白にまで上りつめた公卿であるとともに、朝廷における頼朝の協力者の筆頭というべき存在であった。しかも、頼経の母は頼朝の姪の娘にあたる。つまり彼はわずかながら源氏の血を引いている、というわけだ。

にもかかわらず、頼経という人は4代将軍の第一候補ではなかった。子供のいなかった3代将軍・源実朝には生前から後継者候補が定められていた。それが後鳥羽上皇の皇子・頼仁親王(よりひとしんのう)だ。ところが、実朝暗殺事件を受けて上皇がこの約束を反故にしてしまった。
理由は「それを認めれば、日本が東西2つに分かれてしまうだろう」というもの。実朝という、天皇にとってコントロールしやすい手駒を失ってしまったため、天皇の血を引く将軍を擁した幕府が彼の手におえない形でさらに勢力を強め、征夷大将軍が「もうひとりの天皇」になるのを恐れたのだろうか。

これを受け、代わりの将軍候補が必要になった。
それでようやく白羽の矢が立ち、いわば「中継ぎ投手」としてお呼びがかかったのが、頼経だったのである。時の執権・北条義時(ほうじょうよしとき)の弟である時房(ときふさ)が1000騎を率いて上洛し、プレッシャーをかけることで朝廷もこれを認め、2歳の頼経が鎌倉に向かうことになった。

征夷大将軍に就任するのはしばらく後のことだが、幕府の長である「鎌倉殿」としてすでに認識はされていたという。実際には北条政子が後見人として政治を取り仕切ったことから、彼女は「尼将軍」と呼ばれた。
源氏の嫡流とつながりがあるとはいえ、源氏の一族自体は東国の各地に存在する。にもかかわらず北条氏が頼経を選んだのは、将軍をただの神興としてしか考えておらず、かつ源氏の血よりさらに格の高い摂家。親王の血を権威付けとして欲していたから、という。

承久の乱と「尼将軍」北条政子

頼経が鎌倉にたどり着いた翌年、鎌倉幕府は存亡の危機を迎えた。武家政権打倒を目指す後鳥羽上皇が、討幕の兵を挙げたのである。いわゆる「承久の乱」であった。もちろん、この一件に幼い頼経は一切関与していない。
上皇としては武家連合としての幕府を分裂させようという企みがあったらしい。実際、彼の下には畿内近国の武士どころか有力御家人まで集まった。また、討伐対象を執権・義時ただひとりに絞ったこともあって、少なからず鎌倉の御家人たちも動揺したようだ。

その思惑を覆したのは、誰あろう政子だった。
彼女は御家人たちを自らの屋敷に集めると、頼朝が彼らに与えた恩について切々と訴え、その恩に報いよ、幕府のために戦え、と演説する。これこそが承久の乱のターニングポイントだったといっていい。御家人たちの動揺は収まり、京へ急行した幕府軍は朝廷軍を一蹴。後鳥羽・順徳・土御門の三上皇はそれぞれ配流となり、仲恭天皇(ちゅうきょうてんのう)は廃位された。
朝廷方についた武士たちも次々と処刑された。

さらに「六波羅探題」という京の守護・朝廷の監視を役目とする組織が新たに設立された。
承久の乱を経て、幕府は朝廷に対して圧倒的な優位に立つに至ったのである。

鎌倉の「大殿」として陰謀をめぐらした男?

1226年(嘉禄2年)、頼経は将軍に就任する。元服したのはその前年のことで、8歳での元服は異例のことであった。
4年後には2代将軍・頼家の遺児で、残された数少ない頼朝の子孫である竹御所を妻に迎えている。

正式に将軍となっても、彼が傀儡であることに変わりはなかった。
それでも、長じてみれば実権への欲求というものは出てくるものだ。また、いくら実権を剥奪されていても、将軍という名があれば、有力御家人のうち幾人かは接近もしてくる。
結果、頼経の周辺には北条氏の中で最も得宗家に近い名門の名越光時や、三浦氏、千葉氏などが集まり、ある種の派閥を形成した。これを放置していれば、頼経が実権を握るということもあったかもしれない。

もちろん、そんなことを北条氏が許すはずもない。1244年(寛元2年)、時の執権・北条経時は強引に彼を将軍の座から退かせ、代わってわずか6歳の頼経の子・頼嗣を元服させ、将軍としたのである。
頼経は将軍から追われた程度ではあきらめなかったようで、出家しながらも鎌倉に残って「大殿」と呼ばれ、さらに京へ追放された後も地位回復に動いていたようだ。
結局はシンパたちも次々と処罰され、息子の頼嗣も同じく将軍の座を追われて京へ追われ、しばらくして父子ともに短期間に連続して死んでしまった。このあたりの事情は頼嗣にも深くかかわってくる。

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