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【歴代征夷大将軍総覧】鎌倉幕府7代・惟康親王――元寇の時代の傀儡将軍 1264年~1326年

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異様な形での「送り返し」

惟康親王は先代将軍である宗尊親王の子として生まれ、1266年(文永3年)に父が追放されたため、わずか3歳で将軍となる。その後、23年間を将軍として過ごし、26歳のときに親王となっている(そのため、彼を「惟康王」と呼ぶ向きもある)。
26歳になった1289年(正応2年)、次代の久明親王と交代する形で将軍職を追われる。そのとき、移動手段である網代車は逆さまであった、という。これは明らかに異常なことだ。

この際、人々は「将軍が京へ配流される」と噂した。配流というのは本来罪を受けて僻地に流されるものだが、日本の中心であるはずの京への配流、というのはおかしい。にもかかわらず、彼らが「配流」という表現を使ったのは、鎌倉=武家政権と京=朝廷の関係が決定的に逆転していたことを意味する。
また、そのことに対する揶揄の意味もあったのだろう。成り上がりの武士たちが、すっかり天皇や公家たちをないがしろにしている、と。

京に戻された惟康親王は、仏門に入って嵯峨の地で暮らしたという。
『増鏡』が「いとかすかにさびしくておわす」と記述するように、他の「元将軍」たちと同じように静かな余生を送ったものと思われる。63歳という異例の長寿を全うしたことは、果たして本人にとって幸福であったのか否か。

元寇の時代の将軍

惟康親王個人が何かをなした、という記録は少ない。23年という在任期間についても、26歳という将軍を辞した際の年齢についても、どちらも源頼朝を除いて最長であるにもかかわらず、だ。
鎌倉幕府の将軍たちはその多くが悲劇的な生涯あるいは死を余儀なくされているのだが、彼についてはその悲劇さえ影が薄い。政権の長であるにもかかわらずのこの存在感のなさ――それこそが惟康親王という人の真の悲劇なのかもしれない。

しかし、彼が将軍を務めていた時期には、鎌倉幕府の歴史を語る上で、いや日本史上においても絶対に欠かせない重大な事件が起きている。
元寇――中国の元王朝が二度にわたって侵略を仕掛けてきたのである。

1268年(文永5年)、すでに属国化していた高麗(朝鮮)を経由して、元から恭順を求める国書が送られてきた。
時の執権・北条時宗ら鎌倉幕府は「返書は送らないこと」「西国の守護たちに海外からの侵略に対して備えをさせること」を決定した。その後、国書が一度届き、これも幕府が黙殺すると使者が訪れたものの、幕府は頑として要求を撥ね除けた。

幕府が強気一辺倒の対応に出たのは、海外情勢に対する情報不足があったようだ。
もし、元という強大な帝国に対して正しい知識があれば、外交交渉はもっと別な形をとっただろう。
防衛準備にしてもあまり積極的でなかった。使者が来てようやく、「九州に所領のある東国の御家人は防衛の準備をすること」と命令したり、困窮して所領を失っていた御家人たちに徳政令を発して所領を取り戻させて支持を得るなどの準備を進めていたのである。

侵略者を打ち倒したのは「神風」だったのか?

1274年(文永11年)、元による一度目の侵略が行われた。文永の役である。
この際は、幕府側の無知による準備不足に、火薬による爆発を利用した兵器「てつはう」や、当時の武士たちにとっては予想外であった集団戦術を駆使する元軍の強さもあいまって、幕府軍は大変な苦戦をすることになった。
ところが、夜になって船に戻った元軍は、そのまま朝になると船ごと姿を消していた。一般には「神風」――すなわち暴風雨によって壊滅したとされているが、何らかの形で内紛が起きた、もしくは幕府軍の激しい抵抗がその原因になったという見方もある。

それでもフビライはあきらめなかった。1281年(弘安4年)、再び元軍が襲来する。こちらは弘安の役と呼ばれる。
この際には、さすがに前回で懲りていた日本側が長大な防塁を構築するなど万全の準備を整えており、また被征服地の軍隊を中心とする元軍の士気が低かったこともあって、幕府軍の勝利に終わった。このときにも暴風雨が元の船を直撃し、大きな被害を与えた、ともいう。

こうして見事に防衛を果たしたものの、元寇を機にただでさえ困窮していた御家人たちはさらに貧しくなり、不満が高まっていき、幕府の滅亡につながっていくことになる。
すなわち、惟康親王という影の薄い将軍の時代に、鎌倉幕府の運命は奈落に落ち始めた、ともいえよう。

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