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【歴代征夷大将軍総覧】室町幕府二代・足利義詮――南北朝動乱を生き抜いた生涯 1330年~1367年

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わずか4歳の旗印

足利尊氏の次男として生まれたが、正妻・登子の産んだ子だったので嫡子とされた。
幼いころに動乱の時代が始まり、その中で反鎌倉幕府の旗印として活用されたり、長じては南北朝の動乱の中で各地を転戦するなど、波瀾万丈の人生を歩んだ。
1333年(元弘3年)、父の尊氏が、北条高時に後醍醐天皇の討伐を命じられて西上した際、「二心がないことを誓う」ための人質として、義詮は母とともに鎌倉に留められることになった。尊氏が京への道中で謀反の意を明らかにすると、そのことが鎌倉に伝わる前に、家臣に守られて脱出している。異母兄である竹若は、鎌倉から送られた使者に運悪く上洛の途中で見つかり殺されてしまったが、義詮はうまく下野に逃れることができた。

その後、天皇方についた新田義貞が鎌倉攻めのために挙兵すると、義詮は父の名代としてこれに参加。200余騎の兵士を率いて参陣している。もちろん、自分の意思で戦場に赴いたわけではないが、名目上はわずか4歳で初陣を果たしたことになる。
まだ4歳の義詮がわざわざ戦場に出されたのは、東国の武士たちを天皇方として蜂起させるためだった。足利氏と新田氏は同根の源氏ではあるが、足利氏は鎌倉幕府初代の源頼朝から厚遇され、代々の北条得宗家とも深いつながりを持ってきた名門だ。冷遇されがちだった新田氏とは名声が違う。その足利氏の嫡子である義詮を旗印として戦場に立たせることで、東国の武士たちに対し言外に参陣を募ったのである。

実際、戦いの終わった後に多くの武士たちが義詮の、というよりそのバックにいる尊氏の名の下に集まったため、これがどうにも面白くない新田軍と足利軍の間に小競り合いが起きかけたほどである。
そのため、尊氏の指揮下にある細川和氏が義貞のもとを訪ね、野心がないことを誓う起請文を書き、ようやく騒ぎを収めたという。

勇敢な側面、臆病な側面

その後は鎌倉にいて、「中先代の乱」に際して一度は鎌倉を追われるも、父とともに再び戻り、以後もこの地にいた。1337年(建武4年)に南朝側の北畠顕家が挙兵すると、鎌倉方は武蔵での戦いに敗北し、すっかり意気消沈してしまう。彼らは義詮の前で「いったん安房や上総に撤退し、東国の情勢を見極めながら戦っていくべきではないか」などと評定を繰り広げていた。

そのとき、当時8歳の義詮が毅然と言葉を放った。
「戦をすることがあれば必ずどちらか一方が負ける。負けをむやみに恐れて戦わずにいれば、関東の管領として鎌倉にいる自分が後で何を言われるかわからない。たとえ小勢であっても敵が来たなら戦い、かなわなければ討死するべし」
――諸将はこの言葉に奮い立った。

それだけでなく、「敵の一方を破ってから安房か上総に撤退し、相手が京都に向かい始めたらその後ろについて共に上洛、宇治や勢多の辺りで尊氏の軍と挟み撃ちにすればいい」と作戦まで講じたとされる。
わずか8歳の幼子が、本当にこのような作戦を打ち出したのかどうかは非常に怪しいので、エピソードが誇張されて伝わったのだろう。

結局この戦いで義詮らは敗れたものの、情勢が足利方有利に傾いたので、彼は無事鎌倉に戻ることができた。
一方、これと対照的なエピソードもある。それは父・尊氏が将軍に就任した後、彼の弟で義詮の叔父にあたる直義と対立するようになった、「観応の擾乱」の中でのことだ。このときには、義詮は直義の代わりに政務を行うため鎌倉から京都に移っていたのだが、直義と手を組んだ南朝方が京都を攻めてきたとき、顕家の時と同じように家臣らが義詮に退却を進言した。
すると、今度はあっさりとその意見を入れて、京都を放棄してしまったのである。これは、戦力の不足以上に、尊氏が京都を留守にしていたことが、義詮の判断の大きな理由になったと見られている。

4度も京を奪われて……

尊氏が死去すると、義詮が2代将軍として後を継いだ。この時には彼もすでに29歳となっていた。
しかし、南朝方との戦いはなおも続いており、さらに尊氏の死によって彼に抑えられてきた諸勢力が不穏な動きを始めた。また、幕府内部でも対立があい続き、政権の安定化のために奔走することになった。
結局、義詮は都合4回も南朝側に京を奪われることになるのだが、そのたびに取り戻し、幕府の強化を進めていった。
やがて、北朝と南朝に講和の兆しが見え始めるが、それを見届けることがないままに、病死することになる。38歳の若さだった。

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