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【歴代征夷大将軍総覧】江戸幕府13代・徳川家定――趣味は料理の「癇癖将軍」 1824年~1858年

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どうにも情けなかった将軍

12代将軍である徳川家慶には二十数名の子がいたものの、そのうちで無事成長して成人したのはたったひとりだった。それが家定である。
そして正直なところ、その家定もまた、無事に成長したとはいいがたい所があった。
彼は生まれつき病弱で、しかも人格のほうにもちょっと問題があった。父の後を継いで将軍になったとき、もう30歳になっていたのだが、その振る舞いは「鳥を追いかける」「銃の先につけた剣先で家臣を追い回す」など、総じて「児童のごとし」と称されるようなものだったのである。

家定の趣味は「料理」であったといい、サツマイモやカボチャを煮た、あるいは饅頭やカステラを作った、さらには病床の家慶に粥を届け、障子にあけた穴から食べる様子を見ていた、という話が伝わっている。軍事階級である武士の頂点に立つ将軍の振る舞いとしては、あまりにも女々しい――当時の武士たちはそう思ったのではないか。
また、感情を制御できず癇癪を起こしたり、目や口、首が勝手に動くので正座ができないなど、奇態としか言いようがない振る舞いもあった。そのため、ついたあだ名が「癇癖将軍」である。

このように、わが子・家定がどうにも将軍の重責には耐えられそうにない、というのは父である家慶にもわかっていたらしい。
そのため、別の候補者に目をつけていた、という話がある。それは徳川斉昭の子で、一橋家に養子として入っていた一橋慶喜(後の15代将軍・徳川慶喜)であった。
慶喜は少年のころから才覚を高く評価されており、また家慶は彼の父の斉昭を頼りにしていたようだから、そのバックアップに期待する部分もあったのかもしれない。しかし、結局この話は流れてしまう。どれだけ頼りなくても、将軍の子がいるのにそれを廃して御三卿・御三家から連れてくるのはあまりにも問題がある、と判断されたのだろう。

対外問題と継嗣問題にはさまれて

家定の時代、幕府はふたつの問題を抱え、混乱していた。
ひとつは先代から引き続いて頭痛の種になっていた対外問題だ。1853年(嘉永6年)に来航したアメリカ海軍のペリー提督は翌年に約束どおり再来航し、幕府としては日米和親条約を結ばざるを得なかった。こうして200年以上にも及ぶ日本の鎖国は解けた。
アメリカはさらに翌年、修好通商条約の締結を求めてきたが、国内の意見はまとまらず、大いに紛糾した。朝廷から勅許をもらうことでこの混乱を解決することが模索されたが、当時の朝廷は強烈な攘夷意見に支配されており、なかなかうまくいかなかった。

もうひとつは、家定の後継者をめぐる問題だった。「安政将軍継嗣問題(あんせいしょうぐんけいしもんだい)」という。
家定は公家から正室を2人迎えたが、相次いで亡くなってしまった。そのため、薩摩藩島津家から3人目の正室を迎えている。これが幕末の動乱期において徳川将軍家存続に奔走した篤姫(天璋院)である。

しかし、先述したように彼は病弱で、「実子は生まれないだろう」と見られていた。ならば御三家や御三卿から後継者を選ばなければいけないのだが、ふたりの有力候補それぞれに支持者がいて、国内を二分する争いになってしまった。
ひとりめの候補者は先にも名の上がった一橋慶喜で、「一橋派」と呼ばれた人々は彼の英明さに期待して支持した。一橋派の特徴として、江戸時代後期に財政改革や殖産興業に成功して大きな力を得ながら、外様大名であるために幕政へ参加できない西南雄藩の大名たちが多く参加していたことが挙げられる。

ふたりめの候補者は紀伊徳川藩主の徳川慶福(とくがわ よしとみ)で、「南紀派」たちは彼のほうが血筋が将軍家に近いことを根拠とした。彼らは血筋の権威によって国難に当たろうとしていたのだ。
このふたつの問題は、井伊直弼が大老に就任し、豪腕を振るったことで解決する。任命したのは家定だ。それまでまったくリーダーシップを発揮しなかった将軍が、死を前にして初めて将軍らしい行動をしたわけだ。しかし、その背景には、南紀派からの働きかけを受けた大奥が、「一橋派があなたを将軍から引き摺り下ろそうとしていますよ」と吹き込んだことがあったといい、結局のところは傀儡に過ぎなかったわけだ。

直弼は勅許を待たずに日米修好通商条約に調印し、また慶福(家茂と改名)を14代目の将軍の座につけた。
家定が亡くなったのはそれからまもなくのことで、死因は「毒殺」「コレラ」などの噂が流れたが、実際には脚気であったようだ。

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