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【殿様の左遷栄転物語】コネに救われた2人の大名 新庄直頼と久留島長親

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縁が功を奏した新庄直頼

コネクションは大事だ、という例は他にもある。まずは常陸国麻生藩の祖となった新庄直頼の場合である。
新庄家は平将門討伐や大ムカデ退治などで知られる藤原秀郷の末裔で、室町時代のはじめごろに近江国新庄に移り住んだ。戦国時代、直頼やその父の代には近江の国人(土豪)として浅井氏に味方したが、織田信長に圧迫されて衰退する中で織田方につき、信長が死ぬと今度は豊臣秀吉についた。

豊臣政権の下では御伽衆であり、また近江大津城、大和宇多城とたびたび領地が変わって、最後には摂津高槻城に落ち着いた。この時の石高は息子の直定と合わせて2万6千石とも3万石ともいう。
その後に起きたのが、問題の関ヶ原の戦いである。直頼は周辺の諸将と歩調を合わせる形で西軍に参加した。しかし関ヶ原での決戦には参加せず、伊賀国は上野城の包囲に加わっている。戦いが終わるとすぐさま家康に恭順を示し、「本当はあなたに味方したかったのですが、上方の諸大名はみな石田三成に味方してしまったので、私ひとりがそれに反対するわけにはいかなかったのです」と弁明したらしい。

もともと戦いの前から直頼と家康の間には少なからず親交があったようで、これを認めた家康は会津の蒲生秀行に直頼・直定親子の身柄を預けた。この蒲生家もまた近江の国人出身で織田政権の下で躍進した家系であり、新庄家とは以前から付き合いがあったらしく、その縁で彼らを預かっている。

新庄家が大名として再興したのはその4年後、1604年(慶長9年)のことである。常陸と下野に3万3千石と改易前より大きい所領を与えられ、これが麻生藩として明治維新まで続く。
このように見事な再興を成し遂げた背景には、将軍家との付き合い、そして有力大名である蒲生家による支援があったのはほぼ間違いないだろう。やはりコネは大事、なのである。

コネに翻弄されもした久留島長親

豊後国森藩の久留島家もまた、コネクションによって救われた家である。もっとも、そのコネクションに翻弄されることにもなるのだが……。
久留島家は豊臣政権のころには「来島」といったが、さらに古くは「村上」を名乗っていた。元は清和源氏なのだがやがて伊予に移り、瀬戸内海の島々で3つの島――能島・因島・来島にそれぞれ住んで、水軍(海賊)として大きな勢力を誇ることになった。小国人から中国地方の覇者へ1代で成り上がった毛利元就が、厳島の戦いで陶晴賢(毛利以前の中国2強の1つ・大内氏の重臣で、このころには主家を乗っ取っていた)を打ち破るにあたって、彼らの力を借りたのはつとに有名だ。

このうち、来島を根拠とする一族は四国の戦国大名である河野家についたが、村上通総の代に離反して豊臣秀吉につき、1万4千石の大名となった。この秀吉が通総のことを「来島」殿と呼んだため、以後この名を使うようになったのだという。
さて、関ヶ原の戦いの際、時の当主である来島長親(康親)は西軍についた。以前から関係が深く、また同じ村上一族を傘下に収めている毛利家との縁がその理由と考えられる。結果として所領を失い、家臣団も散り散りになってわずか数名が長親に付き従うだけとなった。

そこからの苦しい浪人生活において、長親を助けたのはコネクションだった。彼の妻は福島正則の姪にあたり、この関係がずいぶん彼を救うことになったようだ。
まず最初に口利きを頼もうと接触した徳川の重臣・井伊直政に家臣が面会できたのも、正則の助けを受けた部分が大きかったと考えられる。ご承知のとおり、福島正則は秀吉の子飼いの武将だったが東軍に与した(第2章で詳述)。

残念ながら直政の口利きは得られなかったのだが、以前から付き合ってきた商人の縁を通じて(豊臣水軍の将として、交通の便宜をはかったことなどがあったのだろうか)、やはり徳川の重臣である本多正信に接触することができた。
これに加えて豊臣家の重臣である片桐且元の協力も得られ、長親は豊後国森藩で大名としての再興にこぎつけたのである。1601年(慶長6年)のことであった。

その後、1616年(元和2年)には「久留島」と名を改めたが、まもなく波乱があった。
1619年(元和5年)、お家再興に大きな力となってくれた福島正則が改易となってしまうのだ。久留島家も連座で処罰を受ける可能性もあったが、さまざまな工作の末、幸運なことにこの危機は回避され、森藩主として幕末まで続くことになる。

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