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【10大戦国大名の実力】島津家①――リーダーシップはどうあるべきか

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戦国時代最南端の兄弟

兄弟で活躍した戦国武将は数多い。
織田信長には多数の弟がいたし、豊臣秀吉の弟・秀長は「天下の調整役」として活躍した。武田信玄の弟・信繁は父・信虎によって兄に代わる武田当主に擁立されようとしたことがあるにもかかわらず、信玄最大の腹心として大いに功績を残した。

これ以外にも「後世に名を残した兄を支えた弟」の逸話は戦国時代に多数存在する。
翻って現代を見ても、兄弟で力を合わせて名を上げた者たちは枚挙にいとまがない。やはり「血のつながり」が生み出す絆というものは大きな意味をもつものなのだろう。

さて、それでは戦国時代でもっとも有名な兄弟といえば――意見はいろいろあるだろうが、私は「島津四兄弟」を挙げたい。
戦国時代日本の最南端・薩摩国から出発して「九州三強の一つ」と謳われた島津家の義久(よしひさ)・義弘(よしひろ)・歳久(としひさ)・家久(いえひさ)はそれぞれに優れた武将であった。
彼らは三強の残り二つである大友・龍造寺を圧倒して九州統一まであと一歩と迫り、豊臣秀吉の送りこんだ大軍も一度は退けて見せた。

毛利・長宗我部・北条・伊達といった各地方の覇者があっさりと秀吉の軍門に下ったことを考えれば、最終的には降伏という道をたどったとはいえ、四兄弟の奮戦はおおいに評価されてしかるべきだろう。
また、戦国時代の九州は倭寇や中国・ヨーロッパ人との交易を通じて海外と深い関係があり、日本有数の貿易港である博多をはじめ豊かな富を生む港がある、中央よりはるか遠い地方でありながら、大きな活気をもつ場所だった。
そのなかで頭角を現したことからも、四兄弟の力を感じ取ることができる。

ところがその後の豊臣政権下における安定の時代に、四兄弟の結束は発揮されない。
一人欠け、二人欠け、残った二人の間も平穏ではなかったようだ。そして最終的には義弘の血筋が薩摩藩主として残ることになった。ここからは「当主以外の実力者がいる体制は乱世には向いていても安定期には向かない」という結論が見えてくるような気はしないだろうか?
そこで本項では、島津氏の歴史と四兄弟の活躍を追いかけながら、リーダーシップのあり方と権力集中の意味についてみていくことにしたい。

鎌倉以来の名門

島津氏の系図によると、その祖は鎌倉幕府を創設した源頼朝の庶長子・忠久(ただひさ)であり、彼が近衛氏の下家司(しもけいし。家政をつかさどる家司のなかでも下級の職)を務める惟宗(これむね)氏の養子になり、日向・薩摩・大隅三ヵ国の守護職と薩摩国島津荘の地頭職を与えられ、地名に由来して「島津氏」を名乗ったのが始まりであるという(ただし、忠久自身が薩摩に入ることはなく、実務は守護代官を派遣して行わせていたようだ)。

また、近年の研究では、忠久はもともと惟宗氏の出身であり、頼朝に寵愛された家臣のひとりであると考えられるようになっている。
鎌倉時代には、忠久の孫・久経(ひさつね)が蒙古襲来を受けて九州に下り、以後島津氏は九州にとどまるようになった。この久経の次男・久長(ひさなが)が薩摩国伊作荘の地頭になってそこに住みついたことから島津分家の一つ・伊作家(いざくけ)が生まれ、のちに島津全体に大きな影響を与えるのだが、それについては後述する。

鎌倉時代末期には、久経の孫にあたる貞久(さだひさ)が後醍醐天皇・足利尊氏の要請を受けて反幕府側について挙兵、幕府の九州支配拠点である鎮西探題攻めで活躍している。
その後、後醍醐天皇による建武の新政が失敗して南北朝時代が到来すると、引き続き足利氏側――すなわち北朝側について戦い、数々の武功を挙げている。

しかし、その一方でこの一族には内紛と混乱が付いて回る。
1400年頃、応永年間には一族の奥州家(大隅守護を譲られた貞久の四男・氏久の家系)が対立する総州家(薩摩守護を譲られた貞久の三男・師久の家系)を下して以後本家筋となるも、国人一揆や肥後の相良氏らによる介入、複数の分家による内紛によってなかなか安定した支配状況にはならなかった。

このような流れの中で、島津氏は戦国時代初期を、内紛に続く内紛および日向の伊東氏や大隅の相良氏・肝付氏などとの対立に明け暮れる、苦難の時代として迎えることになる。この時期を称して「三州大乱」(三州とは日向・薩摩・大隅三ヵ国のこと)と呼んだ――というあたりからも、その混乱ぶりがわかる。
島津氏は後年の華々しい活躍から強力な戦国大名のイメージが強い。しかし、一族がまとまるまではこうした苦難の時期が長く続いたのである。

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