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【「籠城」から学ぶ逆境のしのぎ方】城をめぐる戦いの様相④――戦わずに勝つための長囲と調略

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戦力にそこまで大きな差がない、あるいはなるべく被害を受けずに城を落としたいと考えた場合、攻城側は「長囲」を選択する。腰をすえて城を囲み、籠城側が音を上げるまで待つというもので、持久戦と考えてほしい。
長囲の基本的な形は「兵糧攻め」――城の中に蓄えられた兵糧(食糧だけでなく、武器や弾薬も含めて)がなくなるまで待つ、というものだ。飢えた兵士は戦闘力も落ちるし、士気も下がる。弱ったところを攻めてもいいし、降伏勧告してもいい、というわけだ。

またこれとは別に「城を包囲することによってそこに立て籠もった軍団を無力化し、その間に勢力を広げる」のを目的とする場合もあったので、必ずしも城を落とすだけではなかったのでは、という見方もある。
当然、籠城側はたっぷりと食糧を用意してから立て籠もるので、そう簡単にはいかない。場合によっては年単位の時間をかけて、じっくりと相手を追い詰めていく必要がある。また、事前の準備としてあらかじめ敵城の周りの米などを買い占めてしまい、備蓄を難しくする手法もある。

ただ、兵糧攻めは簡単なことではない。長く城を包囲すれば、たくさんの兵糧が必要になったり、士気が下がったりするのは、籠城側だけではないのだ。むしろ、わざわざ遠征してきた攻城側のほうが、この種の問題に頭を悩ませなければならなかった。
豊臣秀吉が長囲を得意としたのは、彼および彼の主君である織田信長が経済力を重視し、豊富な兵站能力を有していたからにほかならない。

長囲のバリエーションを二つ紹介しよう。両方とも「水」にかかわるものだ。
ひとつは「干殺し」という手法である。これは敵城の水源を破壊し、水が飲めないようにするものだ。水は食糧以上に人間が生きるのに直結する要素だから、てき面に効く。それだけに、籠城側は井戸をはじめとする水の確保に神経質になるわけだ。

もうひとつは「水攻め」である。ここまで繰り返し紹介してきたように、生活のための飲料水や防備のための水堀、交通のための川や海など、城にとって「水」は非常に重要な要素だ。
それを逆利用するのがこの水攻め――具体的には土木工事で近くの川の流れを変え、堤防を築いて、城を水浸しにしてしまう戦法だ。結果、その城は孤立し、援軍が後詰決戦に挑むのも難しくなる。川に面していて窪地にある城などに、特に効果があると考えられる。しかし、これも大規模な土木工事を必要とするから、通常の兵糧攻め以上に経済力が必要であったろう。

なんにせよ、城を攻めるのは大変なことだ。
人が死ぬし、兵糧や武器が必要だ。城を奪い取って自分の拠点にするなら、各種の構造物を破壊してしまった後には修復しなければいけないので、これも多大な手間がかかる。

では、どうすればいいのか。実は、戦わずして城を落としてしまう方法がある。
いわゆる「調略工作」――寝返りを誘うのだ。少なくない城主がもともとは独立勢力の国人領主だったし、そうでなくても領地をもつ武将であれば「今の大名にそのまま付いていっていいのか? 別の勢力に味方したほうがよいのではないか?」と考えても全く不思議ではない。
そのような城主に接近して利を説き、寝返らせてしまえば、兵を動かす必要すらない。最小限のコストで城が手に入るわけだ。

そうでなくても、ある程度追い詰めた末に降伏を迫ったり、あるいは城内にいる城主以外の敵将を裏切らせて扉を開けさせたり内部を混乱させたりと、この種の工作はしばしば多用される。
結局のところ、力押しを続けても被害が増えるばかりだからだ。いかに少ない手間で最大の効果を得られるか――これは戦国大名に限らず、古今東西の指導者が細心の注意を払わなければいけないポイントであろう。

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