攻城団ブログ

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お城のガイドツアーに「対話型鑑賞」を取り入れていきたい

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先日開催した城たび〈ストリートミュージアムで巡る和歌山城ツアー〉のワンシーンをご紹介します。
ツアー中に見つけた大手門の軒丸瓦の家紋について、ぼくを含む複数の団員でこんな会話をしました。

「この軒丸瓦の家紋は見たことないけどなんだろう」
「何かしら史実に基づいた家紋だとすればどの家の家紋か」
「大手門は浅野時代の途中に作られた(当時は市之橋御門)ので考えられるのは浅野家か紀州徳川家」
「いずれかの簡略化された家紋か」
「鬼瓦は三つ葉葵だから紀州徳川家に関連した家紋か」
「替紋や裏紋の可能性もありそう」
「あるいは火の用心で使われる〈巴紋〉のように軒丸瓦によくある紋様か」

一部ぼくの脳内会話も含んでますが、目にした軒丸瓦の家紋に対して浮かんだ疑問や推理を参加者同士で話しています。
昨日レポートを書きながら、あらためて当時の状況を振り返っていた際に「あ、これは対話型鑑賞になっているな」と思いました。

城たびに対話型鑑賞を取り入れられないか

ぼくは去年から何度か「対話型鑑賞」について語っていますが、簡単に説明すると、これは1980年代半ばにアメリカのMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開発された、アート作品の鑑賞法です。
従来の鑑賞法は、学芸員が見学者にそのアート作品がいかにすごいか、作者の情報や時代背景、作品に使われた技法などを解説して知識を与えるもので、それは結果的にアート鑑賞の敷居を高め、美術館への足を遠ざけることにつながりました。

そこに危機感を抱いたMoMAは、美術の知識を抜きにして、まずは見学者同士が目の前のアート作品に向き合い、各自が抱いた感想や疑問などを話し合う鑑賞法を考案しました。
それが対話型鑑賞で、学芸員は「教える人」ではなく、ファシリテーターとして見学者の会話を促進するために問いかけたり、発言を促す役割をつとめます。
(このへんはまだ勉強中なので不正確な部分も混ざっているかもしれません)

ぼく自身、何度かお城のガイドをつとめたこともありますが、自分が学んだ知識をシェアするという考え方でやっていました。
本を読んだり、学芸員の解説会に参加して得た情報があるので、それを共有するだけでも喜ばれるのは事実です。ただそれは「学習の効率化」であって、お城や歴史のおもしろさを伝えられている実感がなかったのです。

ただありがたいことに過去のガイドツアーの参加者満足度は非常に高く、そのギャップがどこにあるのか考えていたのですが、たぶんそれは(ぼくも含め)参加者同士で話しながら見学したことの影響が大きいのではないかと気づきました。
ふだんひとりで見学することが多いから、ガイドツアーに参加して複数人で、しかも会話しながら見学するだけで新鮮で楽しいのだろうと。
だとしたらその部分をより活かして改善できればもっとおもしろくなるんじゃないかと思っていて、見つけたのが「対話型鑑賞」です。

瓦の紋様だけでなく、

  • この堀幅はすごい!
  • 大手門はなぜこの位置に?
  • 和歌山城は虎伏山の西峰に連立式天守が、東峰に本丸御殿があるけどこんな構造の城ってほかにある?

などなど、見学中に浮かんだ疑問や、目にしたものへの感想を述べ合うことができたら楽しそうだと思いませんか。
さらに参加者が過去に訪問したお城と比較したり、本やテレビで見聞きした情報があれば(たとえば「ブラタモリでは○○と言ってた」とか)補足をしてみんなで理由などを推理して考えることで、より豊かな時間を過ごせるとぼくは思うのです。

もちろんガイド(ファシリテーター)が答えを知ってたら、その場で教えてあげてもいいし、ツアー後にルームで説明したり「復習会」をZoomで開催して当日の疑問を解決してもいいですね。
今回の城たびでは大手門の件はガイドの黒まめさんがあとで調べて共有してくれましたが、素晴らしいアフターフォローでした。なおガイドもわからないことも当然あるでしょうし、その場合は教育委員会などに代表者が問い合わせたらいいと思います。

ガイドをやっているとついつい「学んだことをシェアしたい」という気持ちが強くなりがちです。結果、自分の話に耳を傾けてほしいばかりに参加者同士の会話を抑えようとしてしまっていた気がします。
でもそれは講演会であって、ぼくが求める理想のガイドツアーじゃないんですよね。むしろ参加者がいろんな発言をしてくれたら成功だと考えたほうがいいし、そこに価値が生まれるんじゃないかと。

城たびはZoomによる事前ミーティングや、参加者だけが参加できるルームなど、現時点でもユニークな試みができていると思います。団員が幹事やガイドをするのも良いプラス要素になってますしね。
そこに対話型鑑賞のエッセンスを加えていくことで、攻城団でしか作れない、城たびに参加しないと味わえない特別な体験を演出できないかなと考えています。
対話型鑑賞は10人以下でおこなうことを推奨されているので、いまの城たびの参加者数ともちょうどマッチしています。

まだ完璧に整理できているわけではないのですが、このタイミングで言語化しておこうと思って書きました。
これからも試行錯誤していきますのでぜひご協力ください。

p.s.
なおこれはぼくが理想のお城ガイドツアーのあり方を模索しているという話であって、「城たび」の幹事やガイドをつとめる方が必ずこの考えに従わなければならないわけではありません。
むしろいろんなやり方を試しながらみんなで改善していけることを望んでいます。

kojodan.jp

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