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【殿様の左遷栄転物語】再興運動が展開された 徳山藩毛利家

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本藩支藩の大喧嘩

本藩との確執が原因になって改易に追い込まれてしまったのが、周防国徳山藩の毛利家である。長州藩(長門国萩藩)毛利家の支流にあたる。
毛利輝元の次男として生まれた毛利就隆(もうり なりたか)が、兄で本家の家督を継いだ秀就から分け与えられた領地のうち都濃郡野上村を居住地と定め、1650年(慶安3年)にここを徳山と改名したのが徳山藩の始まりである。

しかし、どうもこの支藩は当初から本藩との仲が悪かったようだ。
きっかけは1649年(慶安2年)、幕府から長州藩に割り当てられた江戸城の普請について、秀就が就隆に手伝ってくれ、と頼んだことだとされる。これを「財政が厳しい」と就隆が断ったので、以後両者の関係が悪化し、兄弟の縁を切るにいたった、というわけだ。

これについては、もともとふたりの間にわだかまりがあった――江戸で暮らすことの多かった兄と本国で過ごした弟、生真面目な兄と自由奔放な弟、という育ちや性格の違いからすでに決裂にいたる要素があって、それがこの事件で爆発したのでは、という見方がある。

また、就隆は同じ支藩の藩主で親戚にあたる長府藩主の毛利秀元(この人物については3章で詳述)とも仲が悪かった。秀元の娘を妻に迎えたのに、離婚してしまったからだ。
かつて、戦国時代には毛利元就を中心に3人の息子ががっちりと手を組み(「三本の矢」の故事で有名)、団結力を武器にした毛利家がこの有様なのだから、もし元就があの世からこの様子を見ていたら、どれほど嘆いたことだろうか。

領地争いは意外な結果に

そんな藩同士の対立を背景とし、ついに事件が起きたのは就隆の四男・元次(もとつぐ)が徳山藩主であった頃、1715年(正徳5年)のことである。
徳山藩と長州藩の境目となる万役山で、長州藩の父子3人が万役山の松の本を伐採したところ、徳山藩の足軽がそれをとがめる。父子らは、この松の木は自分たちが以前植えたものだと反論したが、足軽は「徳山領の木を盗伐した」として父親を斬殺し、子のひとりにも怪我を負わせたのである。

両毛利家の間には以前から確執があったものの、訴訟に至るほどではなかった。
ところがこの事件をきっかけとして、本格的に決裂してしまったのだ。長州藩は徳山藩の謝罪を求めたが、徳山藩側は「徳山藩内の木を盗伐したことに対する当然の処置」としてそれを受け入れなかった。江戸時代、こういう領地問題はしばしば起きてやっかいなことになったのだが、このケースでもそうだった。

長州藩主の毛利吉元(よしもと)が元次を説得し問題を解決に導こうとしたが、元次がそれに同意しなかったため幕府に訴えた。それでも、この時の要望は「元次を引退させてほしい」という程度で、本藩としてはあまり大きな問題にしたくなかったのだろう。

ところが、幕府は「本家への礼を失している」「藩政の状況もよくない」として元次に改易をいい渡す。
徳山藩の所領は萩藩に返還され、元次は出羽国新庄藩に身柄を預けられることになった。また、吉元としてもさすがにここまでのことになるとは思わなかったのだろう、退去させられそうになった徳山藩士たちを温情を発揮して庇護した。

決め手は「百姓のフリ」!?

この状況下において、徳山藩士たちを中心とした再興運動が起こった。活動の中心となったのは奈古屋里人(なごや さとんど)という家老である。この人は、先の事件が起きた際に元次を諫め、追放されたという背景があったのだが、そのような遺恨よりもまず家の存続をこそ第一義に動いた、ということなのだろう。

当初は幕府に無視されていたが、5千人の農民が徳山藩の再興を嘆願するために萩藩ヘ向かうという事件が起きる。
結局このときの運動は途中でなだめられて解散に終わったものの、里人は発言権を持たぬ百姓らの力を借りて幕府に元次が為政者として優れていることを訴えることが効果をもたらすと判断していた。

そこで里人は、「周防徳山領百姓中」と署名した三通の嘆願書を江戸に送り、投げ文という形でいかにも百姓たちの素朴な思いの発露であるかのように演出し、徳山藩の再興を訴えた。
タイミングのいいことに、将軍が8代目の徳川吉宗に交代していたこともあって、幕府の態度は軟化していた。結果、1719年(享保4年)元次から次男の元堯に家督を相続することが許され、徳山藩は復活する。

その後、徳山藩は6代にわたって毛利家が藩主を務め、明治維新を迎えた。

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